張り場風景
最近は木地場の杉さんが張り場の手伝い中。
どの部署も助け合いをしながら仕事を進めていきます。
「工房で撮る椅子シリーズ」
KAKInoISU / design : Keisuke Furuta
W445×D500×H765×SH445
大きく湾曲した背のフレームが特徴的な椅子。
コンパクトなサイズに収まっていますが、
座も背もゆったりとした感触が得られます。
背は布張りタイプと無垢の2タイプ。
どちらの背も「曲げ木×切削加工」。
無垢の背は木目の美しさが際立ちます。
丸みのついた曲線が優しい背当たり。
無垢のテーブルと合わせやすいです。
布の背はクッション性が増すので
より一層背当たりが良くなります。
ファブリックの面積が増えるので
樹種との組み合わせ方で個性を出しやすいです。
浮いたような座面や
各パーツの繋がりが見ていて心地よく
どこか可愛らしくて優しい雰囲気の椅子です。
木取り場ではアルさんが奮闘中!
モルダーと呼ばれる機械でひたすら板材を自動鉋がけ。
荒木の表面が残らないように
1本1本、木材の反り方をみながら加工。
なので作業はスピーディでありながら慎重です。
普段は気さくな方ですが、最近は仕事中の雰囲気が違います。
僕が横でカメラを向けてても一切視界に入ってないのでは?
というくらい集中しているのが伝わってきました。
椅子製作に欠かせない工程の「曲げ木」。
板状の木材に熱と水分を加えて
プレス機械で求める具合まで曲げます。
あとは、その状態のまま高周波を当てて
入れた分の水分を抜き取ってから乾燥させます。
「ピーッ!ピーッ!」」
たまたま曲げ場を通りかかると
機械音が鳴り響きだしました。
これは真空釜で木材が蒸し終わった合図。
せっかくなので写真を撮りながら追ってみましょう。
真空釜に入れられて熱と水分を含んだ木材。
ここからプレス機に行くまでは時間との勝負。
蒸された材料をまずは金物にセット。
これは帯鉄と呼ばれる曲げ木専用の道具で、
曲げるときに木材が折れるの防ぐ役割をします。
そうして次はプレス機の中へ。
蒸した木材の熱を冷まさないように
水分が抜けないように素早くセットします。
「グググ...」と重い機械音を立てながら
油圧プレスの力で木材が曲げられていきます。
作業者にとってここが一番緊張するところ。
ここまで来るのにいくつかポイントがあります。
元々の木材料の状態(含水率や木目)、
釜での蒸し加減、帯鉄やプレス機のセットの仕方など。
上手くできてないと綺麗な弧を描かないか
最悪の場合「バキッ!!」と折れてしまいます。
このあとも高周波を当てて水分を抜き取るときや
乾燥させるのにもコツがあり、
マニュアル通りなんてなく
経験や感覚がものをいう仕事です。
木地場の大ベテラン・鳥羽さんが
6月30日をもって定年退職されました。
鳥羽さんは仕事の技術や知識経験はもちろんのこと、
いつも穏やかで誰に対しても分け隔てなく優しくて
聞いたら何でも笑顔で教えてくれる大ベテラン。
そんな懐の広さや人柄がとても魅力的な方でした。
会社の誰もが椅子職人として尊敬していた気持ちと
退職されたことの寂しさでいっぱいです。
「安全に気をつけて、これからも盛り上げていってください。」
鳥羽さんの言葉を胸に今後も製作に励みたいと思います。
40年間、長い間本当にお疲れ様でした。
一番最初の加工はクロスカットソーから。
まずは荒木の板をよく観察して、その状態を見極めます。
乾燥割れや大きな節などの使えない部分を避けながら
大まかに寸法カットしていきます。
材料の歩留まりを左右する重要な仕事です。